『果て遠き丘』[ 春の日 ](五)30 ツネがいった。その声……

ツネがいった。その声にハッとわれに返って、恵理子は車の外を見た。旭山から帰る車が数珠つなぎになっていた。車はもう、旭山の麓にきていた。警官が鋭く笛を鳴らしながら、人と車をさばいていた。恵理子たちの車は、麓の橋の上でしばらく待たされ、やがてのろのろと山に登って行った。あでやかな濃い桜が、山の斜面にいっぱいに咲き匂っている。


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